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皆さんは「管理栄養士」ってどんな仕事だと思いますか?
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10年以上前には「栄養士のちょっと上」みたいな、失礼極まりない感じでしたが(笑)。
今や病院から介護施設、ドラッグストア、食品メーカー、フリーランスなど、
各方面で大活躍する国家資格です。
受験する国家試験が一つなので、
学生時代に勉強する内容はみんな同じです。
でも、就職先によって求められるスキルも違うし、身につく知識も大幅に変わってきます。
私は10年以上大学病院に勤務しており、
病院管理栄養士としてスキルを磨いてきました。
今回は現役病院管理栄養士の私が、知られざる病院での業務についてお話します。
普段何をやっているのか、ちょっと変わった(?)生態もご紹介!
主な業務
多岐にわたる病院管理栄養士の業務。
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病棟での栄養管理業務
私のポジションは「病棟管理栄養士」。
2つの病棟を担当しており、
病床数にして110床程度が担当です。
詳しい内容は下の「病棟管理栄養士の日常」の項目で書きますが、
管理栄養士の卵として大学で学んだ解剖生理学や生化学、病態栄養全般の知識が大活躍します。
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でも、今は仕事として関わると非常に大きなやりがいを感じます。
患者さんの治療に直接携わることができるので、
目で見える形で医療に貢献できるのが大きなポイントです。
一方で亡くなる患者さんと向き合うこともあり、
精神的にもツライ部分があるのも否定できません。
栄養相談
管理栄養士にとって、
栄養相談はなくてはならない業務の一つ。
専門職として最もパワーを発揮できるところです。
また、管理栄養士が栄養相談をすることで診療報酬が発生し、病院の収益にもなります。
病院経営にも携わることができるわけですね。
内容は多岐にわたります。
糖尿病・腎臓病・脂質異常症などの一般的な疾患の他、
癌患者さんの食欲不振や嚥下障害に対する栄養相談も診療報酬の対象になっています。
複数の疾患を合併している患者さんも多いです。
何を優先的に治療すべきか・制限をどこまで行うかを、
検査値や身体状況・治療方針などを含めて総合的に判断していきます。
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さらに乳児~学童、思春期の子どもたちへの離乳食・アレルギー・肥満・偏食などへの指導もあり、
年代に関わらず対応できる力が求められます。
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また、近年では生活保護を受けている患者さんやメンタル疾患を持つ患者さんも多くみられます。
経済的や心理的な面での制約も考慮しつつ、
実現可能な目標を細かく立てていく必要もあります。
私の勤務先では月に200~250件程度の栄養相談を行っており、
年間に換算すると2400~3000件となります。
医師からの依頼がないと初回栄養相談はオーダーできませんが、
治療食を提供している患者さんは基本的に栄養相談の対象です。
主治医に連絡して栄養相談の予約を入れてもらうなどの働きかけもしています。
また、特に食事療法が必要な病態の患者さん関しては、
診療科のクリニカルパス(診療スケジュール)で栄養相談があらかじめ組み込まれています。
- 消化管に対する外科手術後
- 糖尿病、心不全の教育入院
- 慢性腎臓病から透析導入に至った患者さん(食事療法が変更となるため)
など
当初はパスに組み込まれることはほとんどありませんでしたが、
食事療法の必要性を粘り強く訴え続けた末に現在の体制に至りました。
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ちなみに、2回目以降の栄養相談は管理栄養士が継続で予約できるので、
こちらで次回の予約を入れていくことを全医局に了承を得ています。
各種医療ケアチームへの参加
新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、
一部のチームはカンファレンスの開催を停止していますが・・。
管理栄養士が参加する医療ケアチームは以下の通りです。
- NST(栄養サポートチーム)
- 緩和ケアチーム
- 褥瘡ケアチーム
- 心不全ケアチーム
- 糖尿病ケアチーム
- 嚥下ケアチーム
- 腎不全・透析ケアチーム
- 周術期栄養ケアチーム
- 脳血管疾患ケアチーム
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ちなみに、私は「日本糖尿病療養指導士」を持っています。
糖尿病に関する認定資格ですね。
これ以外に、チーム編成がなくても医局のカンファレンスに呼ばれていくこともあります。
医師の中に飛び込むのは今でも緊張しますが、
必要性を感じてもらえているのはありがたいことです。
どのチームも医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・PT・STなどの多職種で連携します。
カンファレンスの結果次第では他の医療チームに紹介するなどのつながりもあり、
時にはチームの垣根を超えて、患者さんにとって最も有効な治療方針を策定していきます。
物品発注
これが意外とバカにならない業務なんですね。
事務員でも雇えればお任せできるのですが、
そんな余裕はないので管理栄養士が行っています。
これは「お金の出どころ」によるものです。
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食材や調理用の手袋など、主に調理業務に使うものは委託会社の方で発注をかけてくれますが、
それ以外の食器類やカトラリー・洗剤類・消毒用アルコール・事務用品などは病院側の会計から購入するもの。
病院側の職員が発注・管理する必要があるのです。
最初の契約にもよると思いますが、
私の職場では8割程度の物品は病院側の負担だと思います。
また、ノロウイルスや新型コロナウイルス陽性の患者がいる場合には、
感染対策上ディスポ食器(使い捨て食器)での提供が必要となります。
特に最近は新型コロナウイルスの流行によってディスポ食器の在庫を
常にきらさないようにしておく必要があり、物品発注も気を抜けない状態です。
在庫状況を出入りの業者に確認したり、
ものによっては優先的に取り置きしておいてもらうなどの対処もあります。
一度納品されているものでも定期的に見積もりを取り直す必要もあり、
通常業務の合間にやるには結構面倒なんですが、文句は言っていられないですね・・。
求められるスキル
患者の状態を読み解く力
カルテには莫大な情報が詰め込まれています。
検査値や画像、処方、食事量など、
これらの情報を総合的に判断していくことが必要です。
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業種によってアクセスできる権限は違いますが、
管理栄養士でもほとんどの情報がみられます。
重要なのは、検査値を複数見比べて判断すること。
例えば、ALB(アルブミン)は栄養状態の指標になると言われていますが、
一概に低ければ栄養状態が悪いとも言い切れません。
術後であれば低くなるのは当たり前、炎症があれば消耗も激しくなります。
ある程度の日数が経過すれば自然と上がってくるケースも多いので、
ALB値が低いからと言っていたずらに食事を変えたり、NSTにかけていてはキリがありません。
逆に、ALB値が高くても油断は禁物。
脱水で血液が濃縮されて高く出ているだけかもしれません。
他の血液指標や医師など他職種のカルテをよく読み込まないと、
適切に対処することはできないわけです。
すぐに対処すべき症例なのか、様子を見るべき症例なのか。
その判断には知識と経験が必要となります。
こればかりは病院に長くいないと難しいですね。
今でも勉強中です。
数分で信頼関係を結ぶコミュニケーション力
入院時の面談はせいぜい数分。
栄養相談でも最長30分です。
一人の患者さんと向き合う時間はそうそう長くありません。
仲良くなる必要はありませんが、少なくとも不安は打ち明けてほしいし、
疑問があれば忌憚なく聞いていただきたいものです。
それが患者さんが安心して治療にあたるためには重要ですからね。
特に食事に関しては皆さん思うところが多い部分。
好きなものが禁止されるのではないか、食生活にダメ出しされるのではないかと
警戒している場合も多いです。
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確かに、とんでもない食生活を送っている人には禁止をすることもありますが、
基本的には患者さんが達成可能な目標を立てるようにしています。
変な言い方ですが、
まずはこちらに敵意がないことをよくよく分かっていただく必要があります(笑)。
信頼に値する人間だと思っていただけるように心がけ、
その上で患者さんと相談して目標設定に入るようにしています。
また、最初の数分で人となりを見極めることが大事。
それに合わせて食事療法の難易度を決める必要もあり、
それには患者さんの目を見てお話することが第一歩。
「病気」ではなく「人」を見るということですね。
コミュケーション力とは、
口が上手いことではありません。
自分をいかにオープンに見せるか、
相手をいかに受け入れるかだと思うのです。
その先に信頼関係があると思うのです。
病棟と厨房との調整力・交渉力
病院の栄養部(科・課)には3種類のタイプがあります。
- 直営:栄養管理業務から厨房業務まで、全ての業務を病院の職員が担うこと
- 一部委託:厨房業務の一部を委託会社に依頼すること(食器洗浄のみなど)
- 完全委託:厨房業務の全てを委託会社に依頼すること
私の病院は、このうち「完全委託」です。
以前は私も調理業務を行っていましたが、
委託化に伴い栄養管理業務に専念するようになりました。
直営だった頃は事務所も厨房も同じ組織だったので、
細かい指示も一言言えば分かってくれました。
しかも、従事しているのは管理栄養士・栄養士・専門調理師のみでプロフェッショナルの集団。
技術も知識もあるので、どんな要望もすぐに形にして患者さんへ提供することができました。
しかし、委託化するとそういうわけにはいきません。
資格を持っているのは一部の社員と契約社員のみで、
あとは無資格の職員も多いです。
また、慢性的な人手不足によって異動やヘルプが頻繁で落ち着く暇がなく、
入れ替わりも激しいために人材が十分に育たない側面もあります。
実は、今の病院に来る前は私自身も委託会社の社員でした。
毎日の業務に追われてスキルアップの勉強をする間もありませんでしたし、
会社の研修も顧客に対するマネジメントばかり。
栄養や調理に関するものはあまりありませんでした。
もう10年以上前のことなので改善されているかもしれませんが、
人手が少なく大変なのは変わっていないようです。
全ての会社が当てはまるわけではありませんが・・。
委託会社に厨房を任せた場合、患者さんへ届けたい食事内容を実現するには
どうしても力量不足と言わざるを得ません。
しかし、キャパシティーを超えるような業務を強要してもミスが増え、
食中毒など致命的な事態を招きかねません。
最悪の場合、委託会社が撤退などすれば一大事!
新しい業者の選定から教育から、全て振り出しに戻ります。
委託会社のキャパシティーを考慮しつつ、
病院として患者さんへ最大限に効果的な食事を提供する。
その調整力・交渉力も必要とされます。
難しいことや大変なことばかりですね。
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お互いの働く環境を整えていくことが、
結果的に質のいい医療に結びついていくわけです。
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知識と経験に裏付けされた積極的な言動
知識と経験は溜め込んでおくものではありません。
それはただの「ケチ」です。
聞かれたことに答えればいいのではなく、
あらゆるケースを想定して「提案」することが重要です。
それが医師に対してでも、部内の同僚に対しても同じことです。
自分が思うことを進言することは大事です。
一方で、苦手な分野があることも事実。
知識と経験があるからこそ、詳しい分野とそうでない分野の区別もつきます。
知ったかぶりはよくありません。
かっこつけたしわ寄せは全て患者さんへ行きます。
医療従事者としてそれは避けたい事態ですね。
自分よりも詳しい人に積極的に質問する、疑問はすぐに解決する。
そういう積極的な言動も必要不可欠です。
逆に、自分の専門分野について聞かれたときには惜しみなく情報提供します。
Win-Winの関係を作り出すことこそ、
プロフェッショナルの仕事ですからね。
ちょっと困った病院管理栄養士の習性
さてさて、
何だかカッコいいことばかり書きましたが。
実はちょっと困った生態もあります(私だけかもしれないけど・・)。
ただの風邪でも「何かの病気の初期症状か?」とビビる
毎日すごい量のカルテを見ています。
しかも、病院の特性上でかなり重症化している疾患や
難しい病態のカルテが多いです。
そんなカルテを日常的に見ていると、
患者さんが最初に感じた「初期症状」を目にします。
肺がんステージⅣの患者さんで、
最初は咳と疲れやすさがあったけど風邪だと思ってほっといた・・とか見ると・・。
ちょっと喉がイガイガしただけでビビります(笑)。
先輩方もそういう感じ。
ちょっとむせると「誤嚥かな?」とか、便秘がひどいと「大腸に何かあるのかな?」とか縁起でもないことを言い出します(笑)。
不謹慎かもしれませんが、なんか過剰に気になっちゃうんですよね。
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おかげで放置せずにすぐに病院にかかるようになったので体は健康そのものですが、
余計な医療費がかかっているのも事実・・。
「大丈夫だよね!」と思っても、しばらくするとモヤッと不安がよぎる。
早期の病院通いはやめられそうにないです。
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テレビに出ている管理栄養士が気になる
「管理栄養士オススメ!」とか言ってると目がいきます。
大々的にやっていると、
高確率で栄養相談で話題に上がるからです(笑)。
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「この前テレビで管理栄養士がいいって言うから、そればっかり食べてるの!」
そういうことをドヤ顔でいう患者さん。
極端すぎて数値悪化してます・・というケースもあるんです。
確かに言ってることは間違っていないんですが、ちょっと切り取りすぎというか・・。
あと、できれば「基礎疾患が一切ない人に限ります」としっかり言ってほしい。
患者さんの希望を打ち砕く身にもなってくれってのが本音です。
家の食事もちょっと病院食風
普段から病院食で4~5品程度の献立を見慣れている分、
家でもそのくらい品数がないと手抜きをしている気になってしまいます。
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自分で自分の首を絞めているような・・。
それは良いとして、問題は「食材の硬さ」。
高齢の患者さんに合わせてしっかり火を通すクセがついているので、
自宅の食事もみんな柔らかい仕上がりに。
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自分では気づきませんでしたが、
家族に「もっと食感があってもいいのに」と言われてハッとしました(笑)。
やりすぎてたか。ごめんなさい。
最近はようやく気をつけて硬めに作ってます。
夫への愛の表現が独特
長年調理もやってきたので、きざみ食からペースト食まで何でも作れます。
また、病棟業務に移ってからは胃瘻など経腸栄養なども詳しくなってきました。
なので、夫に自信満々に言ったことがあります。
「病院でいろんな形態の食事を勉強したから、将来は治療食でも大丈夫!
きざみだろうがチューブ栄養だろうが、何でもやってあげるからね!安心して!」
私としては「どんな状態になってもそばで支えるからね」という意味だったんですが、
夫はドン引き(笑)。
「・・え。そんなのやだ。そうならないようにしたい・・」
ですよね~。
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夫への愛はもっと素直に伝えるべきですね。
まとめ
病院の仕事は、一言で言えばやはり「大変」です。
業務の量と専門性もさることながら、人の生死に関わる仕事です。
しかし、だからこそ大きなやりがいも感じられます。
病気の治療は誰にとってもツライものです。
その中で楽しみに感じるのは「食事」。
病気の種類によっては避けた方がいい食品もあります。
それでも、できる限り食事の範囲を狭めずに治療に向き合えるよう、
患者さんに寄り添って栄養相談をするようにしています。
退院する患者さんを見送るのもとても大きな喜びですし、
退院後も外来でお会いすると声をかけていただけるのも嬉しいものです。
人の人生がより豊かになるように、
適切な食事を伝え続けることが病院管理栄養士の使命です。
今後は薬局やドラッグストアなど、
地域で活躍する管理栄養士さんと連携できたらいいなぁ、と思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!